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「富士山 日本の誇りと信仰を高める山」
1962年、アメリカで行われたプロスキー世界選手権に出場したとき、必ず聞かれた質問は「フジ ヤマでスキーしたか」である。山スキーという分野では密かに「俺は日本一のヤマスキーヤーだ」と自負していた、お山のスキー大将たるぼくも、この質問をさ れる度に、宿題を忘れた小学生のような気持ちになった。
滑るどころか、富士山には一度も登ったことさえなかった。当時の大半のアメリカ人の日本に関する知識といえば「フジヤマ、サクラ、ゲイシャ」の三点セット。日本にスキー場なんてないときめつけている無知なアメリカの山男たち、いや新聞記者でもそうだった。
アメリカに行ってにわか愛国者になったぼくにとって、何故かこれがいちばん心にひっかかった。「日本へ帰ったら必ず富士山のテッペンから滑るぞ」。
春、残雪の富士山を父と共に山頂から滑った。「フジヤマの斜面は世界一だ」それからは世界のどこへ行っても自慢できた。
あれから何度、富士山に登り、滑ったことだろう。
富士山頂からのパラシュートによるスキー滑降 ーー これが1970年のエベレスト大滑降につながり。70才でのエベレスト登頂も、まず富士山を登ることからはじまった。ぼくの世界へのチャレンジの原点は富士山からだった。
古来、富士山には日本人の心を育てる大きな霊力があった。“高きを志す魂に栄光あれ”と教えてくれた。
世界の山々のなかで富士山ほど詩に詠まれた山はなく、そして日本人の修験道の山として自然を尊う信仰 ーー 千年をこえる数えきれない人々の登り続けられてきた信仰の山、日本の誇り、富士山を世界遺産へ。