今年3月に公開されたFukushima50(原作は門田隆将著のノンフィクション『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』)。
2011年に発生した東日本大震災に伴う福島第一原発事故に際して、東日本壊滅という最悪の事態を命がけで阻止した原発職員らの決死の行動を描い作品。
この作品は震災後の対応がテーマ、冒頭こそ、地震によるシーンが描かれているが、全編を通して訴えるのは現場の人たちの勇気と諦めない心だ。
そう言う意味からもこの本『宝永・富士山噴火』も富士山噴火への内容を彷彿させるが、噴火の描写はほとんどない。
宝永の噴火は1707年11月23日。
噴火の処理に追われる農民、名主、行政官たち。
降灰が降り注ぎ、田畑は壊滅状態。雨が降れば灰は流れて川を埋め、洪水を引き起こす。
そこに立ち向かう人たちは絶望感が蔓延する中、復興に一筋の光を見出す。
もちろん今の時代のような重機や自衛隊の投入もない。
農民一人一人の災害に立ち向かう気持ちが全てだ。
その姿は読んでいて胸を熱くする。
災害はもちろんないに越したことはない。
しかし、いつの時代も日々の暮らしと災害は背中合わせだ。
災害に立ち向かう前に災害に備えることしかできないが、災害に備えると言う些細なことを思い出させてくれた一冊になった。
タイトル/宝永・富士大噴火(2001年作品)
著者/芝豪
発行/光文社時代小説文庫