富士山本と同じくらい、歴史本が好きだ。
最近では戦国時代にはまっている。特に織田信長を中心に本を読み漁っている。
この本「富士山―聖と美の山」では富士山を文化的側面から、歴史、芸術、など多方面から解説をしてくれている。
この本文中、好きな箇所は、もちろん織田信長の富士山見物のくだりである。
武田勝頼を破った信長は、わざわざ富士山見物に出向いている。
そして富士山を眺め、「ついに日本一の名物を手に入れたわ!」と言ったとか、言わなかったとか。
信長がどこから富士山を眺めたかが、信長の伝記「信長公記」(しんちょうこうき)に記されている。
文中に「大ケ原」とあり、この本の著者上垣外氏は現在の北杜市白州町であると書き添えている。
信長にとって、富士山とは「天下一統」(統一と同じ意)の象徴だったのだろう。
富士山麓で喜びのあまり馬を狂ったように走らせる様子も公記には描かれている。そんな解説が本文にも続く。
信長以外でいえば、聖徳太子、日蓮、足利家、世阿弥、そして秀吉、家光、北斎など
歴史上の人物と富士山との関わりについて、この本は教えてくれる。
まさに富士山と文化を知るための入門書のような一冊だ。
本書最後に上垣外氏は「結語」としてこう締めくくっている。
「富士山の景観の美は日本の独占物ではなくして、世界の人々のものである」
この結語にこそ、富士山が世界遺産に相応しい答えがあるような気がする。