イルカさん

シンガーソングライター/IUCN国際自然保護連合親善大使
東京生まれ。女子美術大学に在学中からフォークグループを結成、74年ソロデビュー。翌年の75年『なごり雪』が大ヒットしシンガーとしての地位を確立する。78年長男“冬馬”君を出産、2年間の休業ののち再び活動を始める。
現在も、コンサート活動を中心に毎年全国ツアーを続けている。又、絵本でも『ちいさな空』シリーズ全4巻を出版。エッセイなどあり、母親でもあるイルカはそれらの作品を通じて、「私達は、皆この地球という大きな生き物に住む、細胞同志である」というメッセージを世代を超えて、沢山の人々へ伝えている。
2004年7月 IUCN国際自然保護連合の初代親善大使に就任した。
私にとって富士山とは登山の対象というより、精神的に大切な存在であると思います。富士山をどこかでみると、思わず手を合わせたくなるような気持になりま す。日本民族は古来から森羅万象を大切にする民族であると言われてきましたが、自分の血にもやはり富士山にたいしてそういう行動を取るということは、そう いう血が流れているのだと思います。その分、十年前の富士山世界自然遺産化の運動が不成功に終わったことは非常にショックでした。
私の父は70歳 過ぎてからも富士山に登っているのですが、トイレやゴミの問題がやはり大変目に付くと嘆いています。富士山は日本の象徴的な山ですから、これからは誰でも が登れるわけではなく、お金をとってでも登山の規制をするということも必要であると思います。みんな登りたいという気持ちは非常に分かりますが、何らかの 手を打たないといけないですよね。去年私は野口健さんのお掃除ツアーに参加してきました。そのときの清掃は、イメージした清掃とは全く異なっていました。 それは単に缶や袋の回収ではなく、ゴミを掘り起こす作業から始めるのです。またそれらのゴミは旅行者がポイっと捨てるようなものとは違い産業廃棄物などの ゴミが非常に多いのです。掘れば掘るほど、「ココ掘れワンワン」的な感じに次々と出てきて、恐ろしいものが出てくような感じがしました。
私は、エ コパックなどをコンサートの際にも配ったりしますが、私は、主婦業をしている中でいつも「お台所から世界が見える、地球がみえる」ということをいつも言っ ています。しかし、今回のゴミは観光者によるものではなく、業者が捨てにくるというサイクルのため、国として何らかの方策を大掛かりに考えないとならない と思います。私は昔から「賢い消費者ってなんだろう」とよく考えます。昔は、お豆腐を買うときに鍋という感じでした。日本人にとって象徴する富士山が「こ のままではいけないのだよ」と自己犠牲を強いられながら私達に教えてくれているのだと思います。
私は富士山の麓に25年くらい前にアトリエを作り ました。そこで、曲作りや歌詞を作ったりするのですが、そこに行くとアイディアが瞬時に浮かびとても不思議なものを感じます。最近、「イルカこころね」と いう言葉を広げるために、「こころねコンサート」というのを開いています。その「こころね」という言葉も、富士山の林道歩いているときに「こころね」って いきなり聞こえたような気がしました。そして、しばらくしたら、また同じく「こころね」という響きが聞こえ、どうしてだろうと考えているうちに、「こころ ね」という詩ができ、歌が出来るようになり、「こころね」というタイトルのアルバムが出来上がりました。21世紀に入ってみんなが「心・心」という言葉を 聞く機会が多くなりましたが、それを富士山が事前に教えてくれたのだと思います。
富士山の姿は、やはり見てホッとします。仕事で海外から帰ってき たときなど飛行機から見えるときがありますが、そのときも「ただいま」という言葉を言いたくなる親心のような感じを受けます。そういう意味で今回の富士山 を世界遺産にする国民会議の活動は、誰かが立ち上がらない限り富士山は泣きっぱなしである、そこに老若男女が富士山を中心にして集まるということが非常に すばらしい活動であると思います。私も国際自然保護連合の親善大使として日本の国は本当に美しく森羅万象を大切にしている国であると胸を張って言いたいで す。そのために、富士山を美しい姿として残しておくためにみんなで協力していけたらと思います。