豊田喜代美さん

声楽家/二期会会員
桐朋学園大学卒業。ドイツのケルン国立音楽大学に留学。萩谷納、柴田睦陸、柴田喜代子、E.ボゼニウス、N.スターノ、F.エーガーマン、イタリアのミラノでF.フェラーリス、ローマでS.ローチに師事。オペラでの新鮮な舞台はいずれも好評を博している。特に「ホフマン物語」(小澤征爾指揮、鈴木敬介演出)では、キャラクターの異なる4役を見事に歌いわけ高い評価を得た。コンサートの分野では、シンフォニー、オラトリオ、ミサ曲のソリストとしても活躍し、深みのある暖かく透明な声質と知的な表現力は高く評価されている。1983年度第11回ジローオペラ賞受賞。1984年度第16回サントリー音楽賞受賞。
数年前、箱根の強羅でお正月を過ごすことがありました。「富士山はどこにいるのかしら?」と探してみましたが、なかなか見つけることができません。見えな いはずでした。全体が見えないほど、実は、富士山はすぐそばにいたのです。見上げると、そこには、これまでに見たこともないような雄大な富士山がいて、私 は、富士山のふところに抱っこされているような感じがしました。富士の山は私にとってかけがえのない存在であり、私の歌の原点であると思います。清く、気 高い富士山が世界遺産になることを喜んでほしいです。そのために、今私たちが何をしなければならないか真剣に直視しなければならないと思います。一回とし て同じ富士山には会うことは出来ませんが、一期一会の感慨と共に、強羅での「富士山に抱っこ」の感覚を大切に、これからも富士山を見ていきたいと思います。