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秋の夜長富士山読書月間<その四>「富士山」田口ランディ 著

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タイトル 富士山
著者 田口ランディ
発行 文藝春秋社(2004年刊)

 

2004年に発表された同作は直木賞候補になり、表紙(写真)のインパクトもあり、
書店に平積みにされ、私も早速購入し、一気に読んだ。
内容はタイトル通り、富士山を題材にした短編になっている。

富士山麓にある新興宗教団体から救出されコンビニで働いている青年にとって、
富士山は「物質であって、物質でない最も孤高の存在」に映る。
その富士山に寄り添い生きたいと青年は願う。(収録タイトル「青い峰」)

また別の短編では、樹海に冒険に出かけた中学生、夜明け、少年たちは富士山を見上げる。
彼らに届いた声は「生きろ」という富士山からのメッセージだった。(収録タイトル「樹海」)

巻末のあとがきが、気に入っている。
「富士山は、不思議な存在です。美しく輝く富士山を見ると、なぜか得をした気分になる。
 きょうは富士山を見たよ、きれいだったよ、と、誰かに伝えたくなる」(以上引用)

これほど富士山を見た時の気持ちを正しく伝えた文章に出会ったことがない。
さらに「とてもありがたく富士山を見上げる」(同引用)と結んでいる。

そう、この短文も、「その通り!」と思わず拍手した。
この「富士山」を読んで以来、こんな風に富士山を書ける田口ランディさんの大フアンになってしまった。

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