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秋の夜長富士山読書月間2013 その六

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出版社 文芸春秋 (2007年新装版刊)
著者 新田 二郎
価格 610円(税込/上下刊有)

 


宝永4年(1707)11月23日午前10時。
富士山の中腹が大爆発をして17日間も噴火を続けた。
59ヵ村に降り注いで積もった小岩や焼け砂は
深いところで一丈四、五尺(約3.3m)にも達したという記録が残っている。

このとき幕府が救済に当たらせたのが
この本の主人公、
関東郡代、伊奈半左衛門忠順(ただのり)である。

伊奈は駿府にあった幕府貯蔵米5千俵を
かなり強引に放出させ飢饉を救った。
しかしこの行動を幕府は許さず、
伊奈氏は郡代職を解任され、切腹させられた。

震災を救済する主人公と全てにおいて
人の命よりも役目を守ろうとする役人のやり取りは
まさに現代に通じるものがある。

この本に描かれているのは
爆発後、飢餓に苦しむ庶民の姿を代弁する富士山の怒りだ。

大自然災害の恐怖を背景に描く、
醜い政権争いを題材にした
新田次郎渾身の長篇時代小説を
ぜひ秋の夜長の一冊としてお薦めしたい。

急げ!書店へ。

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