宝永4年(1707)11月23日午前10時。
富士山の中腹が大爆発をして17日間も噴火を続けた。
59ヵ村に降り注いで積もった小岩や焼け砂は
深いところで一丈四、五尺(約3.3m)にも達したという記録が残っている。
このとき幕府が救済に当たらせたのが
この本の主人公、
関東郡代、伊奈半左衛門忠順(ただのり)である。
伊奈は駿府にあった幕府貯蔵米5千俵を
かなり強引に放出させ飢饉を救った。
しかしこの行動を幕府は許さず、
伊奈氏は郡代職を解任され、切腹させられた。
震災を救済する主人公と全てにおいて
人の命よりも役目を守ろうとする役人のやり取りは
まさに現代に通じるものがある。
この本に描かれているのは
爆発後、飢餓に苦しむ庶民の姿を代弁する富士山の怒りだ。
大自然災害の恐怖を背景に描く、
醜い政権争いを題材にした
新田次郎渾身の長篇時代小説を
ぜひ秋の夜長の一冊としてお薦めしたい。
急げ!書店へ。