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秋の夜長富士山読書月間<その六>「風呂屋の富士山」 町田忍+大竹誠 共著

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タイトル 風呂屋の富士山
著者 町田忍 + 大竹誠
発行 ファラオ企画(1994年刊)

 

かつて、私が住んだ町、鎌倉にも実に立派な銭湯があり、浴槽の壁には見事な富士山画が描かれていた。
鎌倉に移り住んでいる間、その銭湯を残し、2軒の銭湯が町から消えており、
この銭湯にいつまで入れるかなぁと感傷的になったのを覚えている。

庶民文化研究における第一人者の町田忍さんと言えば銭湯富士山背景画研究家としても右にでる人はいない。
全国の銭湯を巡り、貴重な資料を多く残されている。

町田さんによると、全国の銭湯の中で最も多い名前は「松の湯」であるという。次に多い名前は「梅の湯」。
銭湯背景画で一番多いのはいわずとしれた「富士山」である。

この本の発行は1994年、当時日本中にはまだ1万軒の銭湯があると町田さんは調査されている。
しかし、銭湯は日に1軒のペースで廃業しているとも書かれていた。
この本の発行から17年以上が経過していることを考えれば、現存する銭湯は半数以下になっている可能性も高い。

当然、「富士山」の背景絵も同様だろう。
町から消えていく銭湯と「富士山絵」。
そんな消えゆく文化を町田さんはこよなく愛し、
銭湯絵を描いてきた絵師の方々や経営者の方々と交流してきた証がこの一冊の本になっている。

まさに人と人との裸の付き合い方がこの本には満載だ。
銭湯が消え、町には大型のスーパー銭湯が増えた。
しかしそこには町田さんが愛した付き合い方は少なくなったかも知れない。

▼ 町田さんのインタビュー記事はこちら ▼
→ 銭湯富士山画と言えばこの人!町田 忍さん
 

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