ゆっくりとした歩調で、一合目を目指す。
「五合目から登る」ことが、富士登山では普通のことだと思われている。
しかし, これは現在の「普通」であり、昔の「普通」は「一合目から歩く」ことだった。
以前、私も五合目まではバスで行き、そこからは徒歩で頂上を目指した。
五合目からは、ひたすら岩山を登る感覚を覚えた。
この感じ方は決して私だけのものではないだろう。
富士山に登った方の大半は、「富士山は単調な岩山を登る」といった
イメージを持たれるのではないだろうか?
そんな私に「富士山は一合目からが良い」と教えてくれた方がいた。
五合目がある以上、当然一合目があることは頭では理解できる。
しかし「一合目から、ですか?」と腑に落ちないでいたら、
「富士山は岩山だと思っているだろう。本当は緑豊かな山なんだよ。
熊野古道って行ったことあるかな?」と話が続いた。
「はい、あります」と応える私。
「私はね、あの熊野古道よりも富士古道のほうが断然良いと思っている。」
そんな会話にもインスパイアされて、今回の富士古道の旅は始まった。
スタート地点は富士急行線富士吉田駅から車で約20分の「馬返し」とする。
「富士は岩山」といったイメージは、この古道を行くと、完全に覆される。
(続く)