みんなで考えよう

富士山インタビュー

山中湖周辺に富士山絶景ポイントはいっぱいあります。きれいな富士山を見に、ぜひ遊びに来てください

山中湖おもてなしの会”は2013年春、山中湖村を訪れる人たちにもっと気持ちよく過ごせる環境を提供したい、
同時に山中湖村全体も盛り上げたいと奮起した地元の有志たちによって結成されました。
早朝の清掃活動、村内の公園やハイキングコースの草刈りなどのほか、地域のイベントにも積極的に参加しています。
その活動が認められ、2016年には山梨県美しい県土づくり推進委員会から奨励賞が、また同じ年におもてなしのやまなし知事表彰が送られました。
現在会員は約20人で、核となって活動しているのは5、6人だそう。
副会長の松本圭二さんと高村利太朗さんに、会の活動と地元への想いをうかがいました。
写真:井坂孝行/取材・文:木村由理江

「山中湖村はこのままでいいのか」という強烈な危機感がありました

−“山中湖おもてなしの会”発足の経緯から教えてください。

松本さん たまたま地元の先輩後輩で話をする機会があったんですよ。先輩後輩と言っても、保育園から中学まで一緒ですし、みんな親戚だったり従兄弟だったりするので、上下関係みたいなのはまったくないんですけどね。そこで「村はこのままでいいのか、何かやらなきゃまずいんじゃないか」という話になったんです。山中湖村の人たちは観光で食べているはずなのに、観光でもっと盛り上がろうという意欲が全体的に薄い気がして、強烈な危機感があったというか。

高村さん 比べるわけじゃないけど、近くの河口湖とか箱根にある“観光地としての活気”みたいなものも感じられなかったし・・。外国人観光客が日本に増え始めた頃でしたけど、外国からくる人たちの受け入れ態勢が整ってない気がしたのも大きかったですね。

松本さん 今のままだと、気がついたら“山中湖村”がなくなって“富士北麓市”なんて呼ばれるようになるかもしれないし、そのうち地元の人が大事にしている行事や古い風習なんかも、「いらないんじゃない?」と切り捨てられてしまうかもしれない。そうなったらもう郷土とは呼べないのかな、それは困るなと思って。それで、自分たちでできることを何かやろうということになったんです。

高村さん ちょうど東京オリンピックの開催が決まった直後だったので、当時話題になっていた“おもてなし”を会の名前にしました。最初は、「じゃあ、俺らに何ができるのか」というところからのスタートだったよね。

松本さん お金はないし、それぞれに仕事はあるし、休日も家庭やプライベートがあるから時間が限られていますからね。それでまずはゴミ拾いから始めることにしたんですよ。

高村さん ゴミがとにかく多かったんです。きれいにするのは、観光地としては基本ですからね。

松本さん あと、自分たちでアンケートを作って、居酒屋とかで一緒になった外国人のお客さんに出身国だとか旅の目的とかを直接インタビューしてまとめたりもしましたね。

−サイクリングロードの清掃が、すごく大変だったとどこかで読みました。

松本さん それは2015年頃ですね。この辺りはすり鉢状の地形なので、大雨や台風で流れてきた腐葉土や枯葉が堆積しやすいんですよ。しかもその上に雑草が根を張ったりして道幅がすごく狭くなっていた。それを家から持ってきたシャベルでどうにか撤去しようとしたんですけど、堆積物の厚さが10cmくらいあるから、1mきれいにするのに男3人がかりで10分くらいかかってしまうんですよ。

高村さん あれはしんどかったね〜(苦笑)。

松本さん 何かいい方法はないかと考えて、人通りのない早朝に、ブルドーザーでバーッとやっちゃいました。無許可のままでしたけど(苦笑)。でもその活動が認められて賞もいただいたし、国土交通省さんから、全国でまだ35団体ぐらいしか指定を受けてない、道路協力団体に指定していただきました。

−活動が徐々に認められてきたわけですね。

高村さん 最初のうちは「お前らはいったい何をやってるんだ?」って変な目で見られていましたけど、今は「ああ、おもてなしの会か」って。だいぶ浸透してきたと思います。

森の再生活動を、これからもっと積極的にやっていきたい

−発足から間もなく丸8年。現在、恒例化している活動は?

松本さん みんなが忙しくなる夏を除いた月1回のゴミ拾いと2ヶ月に1回のサイクリングロード清掃、あと7月には大平山のハイキングコースの草刈り、9月の安産祭りの休憩所と仮設トイレの設置、そして12月前後に開催する親子でゴミ拾い&焼き芋大会ですね。去年、11月1日と12月1日にやった“親子で山中湖満月ナイトハイク”は、今年から恒例になりそうです。御殿場のmicri(みくり)というフリーマガジンで水ヶ塚公園を起点にした満月ナイトハイクの案内を見つけて、これなら山中湖でもできるんじゃないかと私が思ったのがきっかけです。夏に3歳の子どもを連れて明神峠まで歩いたりしていたので、親子で参加できるように平野パノラマ台から明神峠のコースがいいんじゃないか、と。それを会のみんなに相談して、関係する各方面にも打診して・・。みんなのおかげで、いいイベントになりました。

高村さん すごくよかったですよ。みんなも喜んでくれたし。

−森の再生の活動にも携わられていると聞きました。

松本さん まだ始めたばかりですが、これからもっと積極的に進めていきたいと考えています。今は荒れ放題の森林ですが、うまいこと木を伐採できれば森林が蘇って生き物たちの餌場もできるだろうし、ロードキルも減るんじゃないかと思います。伐採した木の活用法などを含め、森林のことについては東京大学富士癒しの森研究所の齋藤(暖生)先生とよく話をさせていただいています。

高村さん その齋藤先生に声をかけていただいて、普段はなかなか入れない癒しの森研究所の敷地内で去年8月30日の朝5時半〜7時に開かれた、NHK交響楽団の弦楽トリオによる“朝もや音楽会”で朝食の提供とコーヒーのサービスもしたんですよ。

松本さん いろんなイベントを通して、富士山の自然とか富士山とのつながりについてもっと地元の子どもたちに伝えていけないだろうかということも、最近は考えています。今年2月に“山中湖アイスキャンドルフェス”があったんですよ。アイスキャンドルが灯されたり、コロナ禍の収束を願って花火やスカイランタンが打ち上げられたりしたんですが、私たちはそこで竹灯籠を灯しました。静岡を拠点に活動する竹灯籠の先駆者である“アカリノワ”の方たちと一緒に富士山麓の山に入って、伐ってきた竹で共同製作した竹灯籠です。生命力の強い竹は富士山麓の山にもどんどん侵食してきているんですよね。そういう背景のある竹灯籠を灯したことで、自然と芸術と環境をつなぐことができたと思うし、これからも地元の子どもたちがいろんなことを考えたり、感じたりするきっかけが作れたらいいな、と思っています。

高村さん おもてなしの会のFacebookに竹灯籠の写真をアップしたら予想以上の反響で、私たちもすごく嬉しかったです。

山中湖村の素晴らしい自然環境を、次世代にしっかりつなげていきたい

−山中湖村の観光地としての発展が、村にどんな変化を起こすといいと考えていますか。

松本さん 実は私たちは、地元を出て行った人たちがなかなか戻ってこないことにも危機感を感じているんですよ。だから私たちがやっていることがいずれ事業化できること、そしてそれが地元出身の人たちが戻って来るいいきっかけになることを期待しています。外で得たものを地元に還元してくれるような循環ができるといいと思うし、「あんな感じで俺たちもやろうぜ」という若い人たちが出てきてくれたら嬉しいですね。

高村さん そうやって村全体が豊かになっていくのが理想ですね。

松本さん 大変な道のりだとは思いますけどね(苦笑)。

−山中湖村の魅力は?

松本さん 昔と変わらない自然環境です。あとは静けさとか。生まれ育ったところですから当然なんでしょうけど、本当に落ち着くし、いいところです。

高村さん 自然は素晴らしいですね。標高が高いので空気がきれいなのもすごくいいし。この自然環境をしっかり守って、次世代につなげていかないといけないなと思っています。

−小さい頃から間近でご覧になっている富士山。どんな存在ですか。

高村さん 神さまですね。私は富士講ではないですけど、子どもの頃からそう思っています。何かあった時は必ず見るし、お墓参りする時みたいに富士山にお願いしたりします。

松本さん この前、6歳の娘が富士山を見て「富士山は男の子? 女の子? でもなんだか女の子みたいだね」って言ったんですよ。確かに、御殿場側から見る富士山は男富士、山中湖側から見る富士山は女富士と呼んだりするんですよね。そういうふうに見る人に何かを感じさせる存在ではあると思います。あって当たり前だし、すべての物事の中心が富士山になってる気がします。何しろあの方が怒ったら、私たちは死んじゃいますしね。

−お2人が好きな、山中湖周辺の富士山絶景ポイントを教えてください。

高村さん いっぱいあるな〜。最近私が好きなのは親水公園とか花の都公園とか・・。

松本さん あとは山中諏訪神社の奥宮とか山中湖交流プラザきららから見る富士山もきれいだよね。

高村さん きららはもう最高の場所ですね。高速から見る、演習場越しの富士山も好きですよ。演習場といえば、私たちはみんな地域の消防団員でもあるので、毎年4月頃に行われる北富士演習場の野焼きに見守りで行くんですけど、その時に見る炎ごしの富士山もすごいですよ。あと明神山とか石割山から見る富士山も、右側に南アルプスが望めていいですよね。

松本さん 絶景ポイントは本当にたくさんあります。それだけ富士山がきれいだ、ということでもあるんでしょうけど(笑)。

−新型コロナウイルスの影響はまだ続いていますが、今はどんな活動を?

高村さん お客さんの少ない状況がずっと続いているので、本当に地元のお店は困っています。

松本さん だからと言って私たちまで止まっているわけにもいかないので、今だからこそできることをやろうと思って、原点であるゴミ拾いをまた始めています。感染が落ち着いたらきれいな富士山が見える山中湖村に、ぜひ遊びに来てください。

松本圭二・高村利太朗
まつもとけいじ・たかむらりたろう

まつもとけいじ 1983年 山中湖村生まれ 地元の高校を卒業後、都内の漫画専門学校へ。その後、アシスタントをしながらプロデビューを目指すが、徐々に担当編集者との間で方向性にズレが生じ、漫画を描くことがつまらなくなる。同じ頃、観光業に従事する父親に「自分が勤めている会社を手伝え」と強く誘われ帰郷。アルバイトを経て、今は裾野市のレジャー施設・イエティで営業企画と飲食の責任者を任されている。5人家族。趣味は蕎麦打ち。

たかむらりたろう 1989年 山中湖村生まれ 高校卒業後、地元で1年間観光業に携わる。19歳から24歳までカナダでネイチャーツーリズムを学び、帰国後、河口湖で富士山ガイドや全般的なアウトドアアクティビティのインストラクターとして活動。その後、ワーキングホリデーを利用してニュージーランドで2年間過ごす。2017年に帰国し、河口湖で観光業に従事。2020年6月からコテージ兼キャンプサイトの営業を計画していたが、オリンピックの延期に伴い2021年春に延期。趣味はキャンプとトレッキング。

山中湖おもてなしの会のFacebook:
https://www.facebook.com/山中湖おもてなしの会-435183539940306/

撮影協力:山中湖情報創造館

インタビューアーカイブ
山田淳富士登山のスペシャリスト
田中みずき女性絵師
青嶋寿和マウントフジ トレイルステーション実行委員長
森原明廣山梨県立博物館学芸課長
渡邊通人富士山自然保護センター自然共生研究室室長
田近義博富士山ツーリズム御殿場実行委員会事務局長
中島紫穂富士山レンジャー
植田めぐみフリーカメラマン
外川真介上の坊project代表・天下茶屋三代目
山本裕輔印伝職人・印伝の山本三代目
金澤中シンガー・ソングライター
池ヶ谷知宏goodbymarket代表・デザイナー
田代博一般財団法人日本地図センター常務理事・地図研究所長
宮下敦成蹊気象観測所所長
加々美久美子御師旧外川家住宅館内ガイド&カフェ「北口夢屋」オーナー
土器屋由紀子認定NPO法人富士山測候所を活用する会理事・江戸川大学名誉教授 農学博士
福田六花医学博士・ミュージシャン・ランナー
舟津宏昭富士山アウトドアミュージアム代表
小松豊特定非営利活動法人 土に還る木 森づくりの会代表理事
菅原久夫富士山自然誌研究会会長・富士山の自然と花を観る会主宰
新谷雅徳一般社団法人エコロジック代表理事
堀内眞富士山世界遺産センター学芸員
杉山泰裕静岡県文化・観光部理事(富士山担当)
前田宜包富士山八合目富士吉田救護所ボランティア医師・市立甲府病院医師
高林恵梨子静岡県人事委員会事務局職員課任用班
今野登志夫陶芸家
遠藤まゆみNPO法人三保の松原・羽衣村事務局長、羽衣ホテル4代目女将
佐野彰秀バンブーアート作家
オマタタツロウ音楽家・画家
高橋百合子富士吉田市教育委員会 歴史文化課 課長補佐
内藤恒雄手漉和紙職人・駿河半紙技術研究会会長
太田安彦一般社団法人 ヨシダトレイルクラブ代表理事・富士吉田市公認富士登山ガイド
影山秀雄機織り職人 手機織処 影山工房主宰
江森甲二裾野市もののふの里銘酒会会長
中尾彩美富士山ビュー特急アテンダント
渡辺義基渡辺ハム工房
古屋英将株式会社ミロク代表取締役社長
井出宇俊井出醸造店・井出酒類販売株式会社営業部
望月基秀製茶問屋 株式会社静岡茶園 常務取締役
関根暢夫・ふじゑさん夫妻ふじさんミュージアム 手話ガイド
御園生一彦米久株式会社代表取締役社長
rumbe dobby手織り作家
小山真人静岡大学 教授 理学博士
勝俣克教富士屋ホテル 河口湖アネックス 富士ビューホテル支配人
漆畑信昭柿田川みどりのトラスト、柿田川自然保護の会各会長
日野原健司太田記念美術館 主席学芸員
渡井一信富士宮市郷土資料館館長
大高康正静岡県富士山世界遺産センター学芸課准教授
渡辺貴彦仮名書家
望月将悟静岡市消防局山岳救助隊員・トレイルランナー
成瀬亮富士山写真家
田部井進也一般社団法人田部井淳子基金代表理事、
クライミングジム&ヨガスタジオ「PLAY」経営
齋藤繁群馬大学大学院医学系研究科教授、医師、日本山岳会理事
吉本充宏山梨県富士山科学研究所 火山防災研究部 主任研究員
柿下木冠書家・公益財団法人独立書人団常務理事
菅田潤子富士山文化舎理事『富士山事記』企画編集担当
安藤智恵子国際地域開発コーディネーター
田中章義歌人
千葉達雄ウルトラトレイル・マウントフジ実行委員会事務局長、
NPO法人富士トレイルランナーズ倶楽部事務局長
松島仁静岡県富士山世界遺産センター 学芸課 教授(美術史)
大鴈丸一志・奈津子夫妻御師のいえ 大鴈丸 fugaku×hitsukiオーナー
有坂蓉子美術家・富士塚研究家
小川壮太プロトレイルランナー、甲州アルプスオートルートチャレンジ実行委員会実行委員長
飯田龍治アマチュアカメラマン
篠原武ふじさんミュージアム学芸員
吉田直嗣陶芸家
春山慶彦株式会社ヤマップ代表
中野光将清瀬市郷土博物館学芸員
久保田賢次山岳科学研究者
鈴木千紘・佐藤優之介看護師・2014年参加, 大学生・2015と2016年参加
松岡秀夫・美喜子さん夫妻「田んぼのなかのドミノハウス」住人
三浦亜希富士河口湖観光総合案内所勤務
石澤弘範富士山ガイド・海抜一万尺 東洋館スタッフ
大庭康嗣富士山裾野自転車倶楽部部長
杉本悠樹富士河口湖町教育委員会生涯学習課文化財係 主査・学芸員
松井由美子英語通訳案内士・国内旅程管理主任者
涌嶋優スカイランナー、富士空界-Fuji SKY-部長、日本スカイランニング協会 ユース委員会 委員長・静岡県マネージャー
岩崎仁合同会社ルーツ&フルーツ「富士山ネイチャーツアーズ」代表
門脇茉海公益財団法人日本交通公社研究員
渡邉明博低山フォトグラファー・山岳写真ASA会長
藤村翔富士市市民部文化振興課 富士市埋蔵文化財調査室 学芸員
勝俣竜哉御殿場市教育委員会社会教育課文化スタッフ統括
前田友和山梨自由研究家
杉山浩平東京大学大学院総合文化研究科 特任研究員 博士(歴史学)
天野和明山岳ガイド、富士山吉田口ガイド、甲州市観光大使、石井スポーツ登山学校校長
井上卓哉富士市市民部文化振興課文化財担当主幹
齋藤天道富士箱根伊豆国立公園管理事務所 富士五湖管理官事務所 国立公園管理官
齋藤暖生東京大学附属演習林 富士癒しの森研究所所長
池川利雄ノースフットトレックガイズ代表、富士山登山ガイド
松本圭二・高村利太朗山中湖おもてなしの会副会長, 山中湖おもてなしの会会員
関口陽子富士山フォトグラファー
猪熊隆之山岳気象予報士・中央大学山岳部監督
髙杉直嗣2021年御殿場口登山道維持工事現場代理人
羽田徳永富士山吉田口登山道馬返し大文司屋六代目
内藤武正富士宮市役所企画部富士山世界遺産課主幹兼企画係長
河野清夏フジヤマミュージアム学芸員
中村修七合目日の出館7代目・富士山吉田口旅館組合長・写真家
野沢藤司河口湖ステラシアター、河口湖円形ホール館長
三浦早苗ダイビング&トレッキングぴっころ代表
田部井政伸一般社団法人田部井淳子基金代表理事
橋都彰夫半蔵坊館長・わらじ館館長
上小澤翔吾富士登山競走実行委員会事務局
杉村知穂富士宮市教育委員会教育部文化課
河野格登山ガイド
鈴木啓悟富士山写真家
松山美恵山梨県富士山科学研究所自然環境科助手

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